6月27日午前、「はやぶさ2が小惑星リュウグウに到着した」というニュースは皆さん記憶に新しいのではないかと思います。
実は自分、初代はやぶさの頃にネットでその存在を知り、ボロボロと涙を流して応援していた一人です。今でもその事を思い出すと胸が熱くなりますし泣きそうになります。はやぶさ帰還後に、JAXAの相模原キャンバス一般公開と共に本物の帰還カプセルが展示されたのですがそれも見に行きました。
宮城には角田宇宙センターがありますが、そこでもはやぶさの展示があったので見に行きました。とにかく足を延ばせるはやぶさのイベントはあの当時行き尽くしたのではないかと思います。ちょっとしたアイドルの追っかけ状態でした。
そんな自分のようなコアなファンが珍しくないはやぶさ。それも、映画が三作品作られるほどの奇跡の連続によるものだと思います。
この辺りはワタクシ語り出すと延々いつまでも語っていることができるのですが、今回は皆さん初代はやぶさの事はある程度ご存知であると想定して、現在運用中であり先日小惑星リュウグウに到着したはやぶさ2のここまでの軌跡や、初代はやぶさとの違いなどについて語らせて頂こうかと思います。意外と東北や宮城県との関わりも深いんですよ。
はやぶさ2の計画が始まったのははやぶさがまだ地球に帰還するよりも前、2007年には予算の請求がされていますので、既に計画が始まっていたと言えるでしょう。その前年の2006年ははやぶさが通信根絶していていましたから、ここからはやぶさが復帰する事が出来なければ現在はやぶさ2が宇宙を飛ぶことはなかったと言えます。
この前後では事業仕分けなどもされていて、2010年にJAXAの情報発信拠点「JAXAi(ジャクサ・アイ)」が事業仕分けにより閉館してしまう事などもありましたので、はやぶさの帰還前は本当に宇宙開発技術に対して世間はあまり関心が無く、予算を確保するのが本当に難しかったそうです。その中ではやぶさ2の計画を進めるのは本当に大変だったと思います。
そんな難しい環境の中ではやぶさ2のプロジェクトは進められました。技術者たちは焦っていたと思います。目的となる小惑星や地球の軌道などを考えると、打ち上げができる時期というのは限られているのです。それなのになかなか潤沢な予算が得られない。探査機が作れなければ打ち上げることもできません。
しかし、はやぶさが通信根絶状態から復旧し、なんとか帰還に向けられたことが追い風となったのでしょう。徐々にはやぶさは注目を浴び始め、はやぶさ2の窮地に声が上がり始めます。予算がらみの詳しい事情は自分にはわかりかねる部分はあるのですが、はやぶさが帰還した翌日にはオンライン署名サイト『署名.TV』ではやぶさ2の予算増額を求める嘆願署名が開始されました。最初の1週間の時点で1万5千通を超える署名が集まったそうです。かく言う自分も著名した一人です。
そんな背景からはやぶさ2は開発に入りました。2014年の打ち上げに向けて開発が進み、2014年の8月には機体が公開されました。そして同年の12月に、H-IIAロケットによって打ち上げられたのです。大変個人的な話で恐縮なのですが、実は当初打ち上げ予定だった11月30日はワタクシ結婚式を挙げておりました。その二日後にはやぶさ2が打ち上げられた事は、奇妙な縁を感じたものです。
そして宇宙への旅を始めたはやぶさ2は2015年12月3日に地球スイングバイ(地球の重力を利用して航行のスピードを上げる方法)を行い、一路リュウグウへと向かいました。そして先日無事にリュウグウへと到着したわけです。凄いですね、初代はやぶさでしたらこの時点でもう故障してる箇所がありましたからね。トラブルが無いのは良いことです。
はやぶさ2はこれから一年半リュウグウ付近に滞在して様々な調査やサンプルの採取を行い、2020年(なんと東京オリンピックの年!)に地球に帰還する予定です。前回は探査機ごと地球に再突入しましたが、本来はカプセルを地球に向けて投下し、探査機はまた宇宙への旅に出る…という予定でしたので、今回は計画通りそのように運用できるといいですよね。正直初代はやぶさの再突入は哀しくて胸が苦しくて見てられませんでした。ううう、思い出すと今でも涙が…
さて、初代はやぶさとはやぶさ2は何が違うのか。
まず大きく違うのは、初代の小惑星探査機はやぶさ(MUSES-C)は「工学実験機」であること。対して小惑星探査機はやぶさ2(Hayabusa2)は「実用機」なのです。
つまり、初代はやぶさは小惑星探査をする技術を培うための実証実験機なんですね。たくさんのトラブルに見舞われたはやぶさですが、そのトラブルやそれに対処した技術はすべて、それ以降の後継機、つまりはやぶさ2に反映されているのです。そして満を持して運用が始まった実用機のはやぶさ2は無事に小惑星リュウグウへとたどり着きました。
これの何が凄いかって、はやぶさはこれまで小惑星探査を運用するための技術やノウハウが確立されていない「工学実験機」にも関わらず、小惑星由来の物質を持ち帰るというサンプルリターンのミッションを成し遂げたということです。その裏でプロジェクトマネージャーやJAXAの技術者の方々の涙ぐましい努力の数々があるのですが、その辺りは興味がありましたら映画などをご覧いただけるとよろしいかと思います。
実はそもそもプロジェクトの流れも違っていて、はやぶさは工学実験衛星シリーズのMUSES-A「ひてん(スイングバイ実験機)」やMUSES-B「はるか(電波天文衛星)」の後続であり、対するはやぶさ2は初代はやぶさの後続でありながら、正式な小惑星探査プロジェクトの第一号と言えるのかもしれません。
目的地も違いますね。初代はやぶさが向かったのは小惑星「イトカワ」、はやぶさ2は小惑星「リュウグウ」です。
このふたつも小惑星のタイプが違います。イトカワはS型小惑星、リュウグウはC型小惑星と言って、それぞれ構成される成分が違うのだそうです。リュウグウはイトカワよりも太陽系形成初期の有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられるそうで、そもそも小惑星探査の大きな目的である「太陽系形成の謎に迫る」という意味ではリュウグウの探査のほうがより目的に近いと言えます。
ちなみにリュウグウって地球に衝突する可能性が高く、潜在的に危険な小惑星として分類されているんだそうですよ…えっ、分類されてるってことは他にもあるってことですよね。そう聞くと怖いですね。
どちらもはやぶさ及びはやぶさ2が打ち上げられた後で小惑星の名前が決められたのですが、「イトカワ」は日本のロケット開発の父と言われた糸川英夫さんから、「リュウグウ」は一般公募で決められました。糸川氏は戦闘機の開発にも携わっていて、有名な「隼」という戦闘機も彼が設計に携わっています。イトカワの命名は宇宙科学研究所側が申請し紆余曲折を経て国際天文学連合に採用されたわけですが、糸川氏の考えを継ぐ技術者たちが「はやぶさ(隼)」を「父」の元へ送ったと考えると胸が熱くなるものがあります。
「リュウグウ」は一般公募ですが、未知の玉手箱を浦島太郎ならぬはやぶさ2が持ち帰ると考えると楽しいですね。「リュウグウ」は水を含む岩石があると期待されているから水由来の名前にしたとか、国際天文学連合の定めたルールで「神話由来の名称が望ましい」とされるからとか、こちらも様々な理由があるようですよ。
機体の違いについては、ただのにわか宇宙機ファンである私には迂闊に語れないほど様々な技術が凝らされているのですが…まず見た目で大きく違うのはアンテナですね。
初代はやぶさはパラボラ型高利得アンテナです。ご家庭のベランダや屋根などによく設置されている衛星放送受信用のアンテナありますよね。こう…曲面の丸い板の真ん中から線が伸びてるみたいな。説明が下手ですみません、見た目的にはあれの大きいのがついてると考えてください。1.6メートルぐらいの。はやぶさ2ではそれよりも高性能なハイゲインアンテナがふたつ使用されています。これは本当にただ丸い平面のお皿が二枚くっついてる感じの見た目です。見た目としてはのっぺりしてしまった印象があるのですが、これが相当の強者です。
なぜふたつついているのかというと「2種類の電波で通信を行う」のだそうです。その分通信の幅が広がりますから、リュウグウのデータをたくさん地球に送ることができます。素晴らしい。更に平面になったことで重さが約四分の一まで軽量化できます。探査機はできるだけ軽いほうがいいらしいので、これもメリットですね。
また、パラボラ型に比べて熱も集めにくいので、機体の劣化を抑えることができます。ハイゲインアンテナは、はやぶさが帰還する少し前に打ち上げられた金星探査機「あかつき」にも使用されているんですよ。
その他にもいくつかのアンテナがどちらの機体にも設置されています。アンテナひとつとっただけでこれだけ違いがあるわけなんですが、これ以上語ったらきっと鬱陶しいのでこのぐらいにしておきます。(既にオタク特有の鬱陶しさが出ているのは否めない…)
さて、語りが過剰気味なので(それでも語り足りない感はあるのですが)、この辺りで私たちの身近なところと小惑星探査に関わりがあるところをご紹介します。
まずは最初に紹介した「角田宇宙センター」JAXAの関連施設です。
ロケットの心臓部となるエンジンの研究・開発を行っているそうです。宇宙開発展示室はいつでも自由に見学ができますよ。また、毎年施設の一般公開もされていますので、そういうイベントの時に足を運ぶと楽しいと思います。
【角田宇宙センター】
(http://fanfun.jaxa.jp/visit/kakuda/)
東北大学からもはやぶさのミッションに携わっている方々がいらっしゃいます。小惑星からのサンプルの採集技術には「東北大学の吉田和哉教授」が携わっておられます。この方は先日、NHK仙台「てれまさむね」ではやぶさ2に関するインタビューに答えてらっしゃいます。
【吉田研究室ホームページ】
(http://www.astro.mech.tohoku.ac.jp/muses-c.html)
また、小惑星サンプルの分析・研究では「中村智樹准教授」が奔走されました。中村准教授は東北大学のサイトにコメントを寄せられています。ちなみに、東北大学ではやぶさ関連のイベントや講演が行われたこともありました。もちろん行って拝聴して参りましたよ。
【東北大学 Mediaoffce 中村准教授コメント】
http://www.sci.tohoku.ac.jp/mediaoffce_s/naka-hayabusa.html
仙台ではありませんが、福島もはやぶさと関わりが深いです。
はやぶさの航行をわかりやすく絵本にした「はやぶさくんの冒険日誌」というストーリーは、会津大学の小野瀬直美さんが携わってらっしゃいます。なんと、挿絵のはやぶさくんを描いているのもこの方なんですよ。はやぶさ映画のひとつ、21世紀FOXの「はやぶさ/HAYABUSA」では、竹内結子さん演じる技術者の水沢がこの絵本を描きながら、はやぶさ目線で語ったりしておられますが、その内容はこの絵本が元になってるのでしょうね。ですから、この映画の主人公のモデルになったのが会津大学の小野瀬直美さんであるとも言えるかもしれません。
福島県船引町の藤倉航装は帰還用パラシュートを開発していますし、いわき市の古河電池はリチウムイオンバッテリーを開発しています。
【藤倉航装】
(http://www.fujikura-parachute.co.jp/)
ちなみに、南相馬市で宇宙関連のイベントがあった際に、はやぶさのプロジェクトマネージャーの川口淳一郎教授と、小説家であり宇宙作家クラブ会員で、はやぶさ帰還時にオーストラリアに飛んで帰還を観測しカプセルのビーコン音を受信した野尻抱介さんの対談が行われたのですが、こちらにも足を運びました。どちらの著書も持っていってサインをいただいてきましたよ。家宝です。
少し遠くなりますが、青森は初代はやぶさプロジェクトマネージャー川口教授の出身地ですね。
こちらは東映の映画「はやぶさ 遥かなる帰還」などでも触れられています。PM役を演じた渡辺謙さんかっこよかったですね…!あの頃は東北新幹線のはやぶさが運用を開始されたこともあって、仙台駅などでも映画はやぶさと新幹線はやぶさがコラボした渡辺謙さんのポスターが張られていましたね。いろんな意味で非常に眼福でした。
さて、ちょっとこの記事を閲覧した方がドン引きするぐらいに語ってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
少しでも宇宙開発に興味を持っていただけたなら幸いです。この中では角田宇宙センターが一番足を運びやすく、また様々な情報に触れることができるおすすめのスポットですよ。
お子様連れでも楽しめるのではないかと思います。よろしければぜひ見学してみて下さいね!
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