最近イベント続きだったのでたまには総務らしい記事を書いてみました、こんにちは総務です。
以前、労働保険制度について簡単にご説明しましたが、今回はその中の「労災保険(労働者災害補償保険)」について少し詳しくご紹介します。
労災保険とは、仕事中や通勤中に発生したケガや病気、その後の障害や死亡した場合に保険給付を行う制度です。業務中の事故や災害にあった労働者および死亡時の遺族を守り補償するための制度で、この制度は雇用形態に関わらず、すべての労働者に受給権が与えられます。
労災保険は人を雇うすべての事業に適用され、その保険料は全額会社が負担し納付します。
労働者を保護するための制度ですが、労働基準法では「災害補償」が定められており、労働者が業務中に傷病を負った場合の補償義務は会社にあります。
労働保険に加入していることにより、その補償を国が請け負ってくれるので、結果的に会社側も守られることになります。
業務中や通勤中など仕事が関係する場合は労災保険、仕事が関係しない傷病や出産などは健康保険の範囲となります。
労災保険の主な保険給付の対象は業務中の「業務災害」と通勤中の「通勤災害」です。
すべての労働者に受給権があり労災の申請をすることができますが、労働基準監督署側で「業務災害および通勤災害」と認定されてはじめて保険給付となるため、すべての傷病が認定される給付制度ではありません。
労災保険の窓口は労働基準監督署なので、労災の判断は会社ではなく労働基準監督署で行います。ですので、労災保険の申請にあたり会社の許可は必要なく、またその申請を却下する権利は当然会社側にはないのです。
労災保険の申請が認定されなかった場合は受診した病院に通知され、病院から労働者に治療費を請求します。健康保険扱いでの請求となるので、3割負担での支払いとなります。
労災保険に加入しているのは会社なので手続きも会社がしてくれる、わけではありません。会社には労災を申請する義務はないため、基本的に申請は労働者またはその遺族が行います。
まずは仕事中・通勤中にケガや病気が発生したら、会社に労災申請をしてくれるか確認してみましょう。
保険給付の申請窓口は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署になります。
労災申請時に提出する書類には「事業主証明」という、会社側が記入し労災であることを認めることを証明する署名欄があります。
しかし上記のとおり、労災申請に会社の許可は必要ありません。もし会社に事業主証明の署名を拒否された場合は、労働基準監督署に相談し、事業主証明を行ってもらえない旨を書類に記載して申請書を提出します。
提出することで労働基準監督署は会社に「署名拒否理由書」を求めるため、事業主は事業主証明を拒否する理由を明確に述べる義務が生じます。
「業務災害」と「通勤災害」によって保険給付の名称が異なり、業務災害による給付を「補償給付」、通勤災害による給付を「給付」と言います。
業務災害に「補償」が含まれるのは、労働基準法により事業主が行うべき補償義務を労災保険が請け負い支給するからです。通勤災害に「補償」が含まれないのは、通勤災害に関しては事業主に補償の義務はないためです。
傷病により治療を受けた場合に、必要な療養費の全額が支給される。
療養のため休業する場合に、休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%(+休業特別支給金20%)相当額が支給される。
療養を開始後1年6ヶ月で治癒せず傷病等級に該当する場合、傷病等級に応じた給付が受けられる。
傷病により障害が残った場合、障害等級に応じた給付が受けられる。
傷病により常時または随時介護が必要となった場合、介護費用として支出した金額(上限あり)が支給される。
傷病により死亡した場合、受給資格に該当する受給権者に支給される給付金。
仕事中(業務災害)・通勤中(通勤災害)にケガや病気が発生したら、救急でない限りまずは労災指定病院を調べ、そこを受診することをおすすめします。労災指定かどうかは、電話で直接確認することが一番確実です。
病院で療養を受ける場合は、必ず「労災であること」を病院側に伝え、健康保険証を使用しないようにしましょう。ここで健康保険で受診してしまうと、後々労災に切り替える手間が生じます。
労働者が亡くなった場合は(7)「遺族補償給付/遺族給付」の手続きを行います。
病院の治療費や薬局の薬代などを全額補償してくれる「療養補償給付/療養給付」の手続きのため、「療養補償給付たる療養の給付請求書」を労働基準監督署に提出します。
上記で労災指定病院の受診をおすすめしましたが、ここなら労災の旨を伝えることで負担金なしで療養を受けられ、また請求書も指定病院を通じて提出することができます。
病院受診の際はこの請求書を持参しますが、もしすぐの用意が難しく持参できない場合は、窓口で「労災申請する」旨を伝えます。病院によっては労災として扱ってくれますが、一旦支払いを求められるケースもあります。
このとき高額請求になる場合もあるので、念のために保険証は持参しましょう。
労災指定以外の医療機関の場合だと治療費を一旦全額立て替えることになり、請求書も労働者自身で労働基準監督署に提出することになります。
この場合、指定病院以外で診療を受けたあと、その費用を請求する受給手続きを行う必要があります。
窓口で10割負担したあと、「療養補償給付たる療養の費用請求書」を事業主と担当医に証明を受け、領収書と一緒に労働基準監督署へ直接提出します。認定後、負担した療養費が口座に振り込まれる仕組みです。
では労災申請をするのに健康保険証を使用してしまった場合はどうでしょう。
健康保険は業務外の傷病を補償する制度で、労災では使用することができません。健康保険で受診してしまうと、本来負担する必要のない医療費を健康保険が支払うことになるので、健康保険への返金と労災に切り替えるための手続きが必要になります。
誤って使用してしまった場合は慌てず、まずは受診後すぐであれば病院に「労災である」ことを連絡します。直後なら、病院側で健康保険から労災へ切替してくれる可能性が高いです。
もししばらく時間が経ってしまい病院側で切替が不可能な場合は、健康保険協会に連絡して直接取り消しの申請をします。このとき、負担3割は窓口で支払っているので診療代差額7割を返金し、10割負担を証明する書類が届いたのちその書類と労災申請用紙を労働基準監督署に提出することになります。
このように時間も労力もかかってしまうので、労災で病院を受診するときは必ず「労災であること」を伝える必要があります。
労災により4日以上会社を休む場合は、休業中の生活費を補償してくれる「休業補償給付/休業給付」の請求手続きを行います。
業務災害なら「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」、通勤災害なら「休業給付支給請求書(様式第16の6)」を労働基準監督署に提出します。
この休業補償給付は休業4日目からの給付保険です。療養開始日から最初の3日間は待機期間となり休業補償給付は受けられませんが、業務災害ならば労働基準法により会社がこの3日間の休業補償を行う義務があります。ただし、通勤災害についてはその限りではありません。
休業補償給付を受けるには
上記の要件すべてを満たす必要があります。
休業補償給付は1日につき「給与基礎日額(労災保険の現金給付の基礎となる額)」の100分の60に相当する額が支給されます。給与基礎日額は、傷病が発生・確定した日以前3ヶ月間の支払われた賃金の総額÷総日数で計算されます。
また受給権者は休業補償給付と同時に請求することで、「休業特別支給金」を受け取ることができます。休業特別支給金は休業給付基礎日額の100分の2に相当する額になるので、つまり合計で休業給付基礎日額の100分の8に相当する額が支給されるということです。
療養開始してから1年6ヶ月が経過しても治癒していない場合は、休業補償給付に代わり「傷病補償年金/傷病年金」が支給されます。(※厚生労働省令で定める傷病等級1級から3級に該当する場合。)
労働基準監督省庁が支給決定をするので請求手続きは行いませんが、1年6ヶ月を経過した日に治癒していない場合、1ヶ月以内に「傷病の状態等に関する届書」の提出は必要となります。
労災により一定以上の障害が残った場合は「障害補償給付/障害給付」の請求手続きを行います。
「障害補償給付支給請求書」を労働基準監督署に提出して労災認定されると、その障害の程度により年金または一時金が支給されます。
第1級から第7級の重い障害に対しては障害補償年金が支給され、第8級から第14級までの比較的軽い障害に対しては障害補償一時金が支給されます。
障害補償年金は障害を有している間年6回に分け支給されますが、障害補償一時金は1回のみ支給されるだけです。また障害等級の区分により、障害補償給付の額も変わってきます。
労災による傷病または障害により要介護状態になった場合は「介護補償給付支給請求書」を労働基準監督署へ提出します。介護の際その費用を支出してる場合には、それを証明できる書類の添付が必要となります。
常時介護を要する場合と随時介護を要する場合で上限給付額は異なりますが、どちらもその月に支出された介護費用を月単位で支給され、介護費用が下限額を下回る場合は一律定額で支給されます。
業務災害または通勤災害により労働者が亡くなった場合は、「遺族補償年金」または「遺族補償一時金」の請求手続きを受給権者が行います。
遺族補償年金の受給資格者となれるのは、労働者の収入によって生計を維持していた労働者の2親等までとなります。ただし、妻以外の者は受給資格条件を満たさなければ支給されません。
遺族補償一時金は労働者の死亡時、遺族補償年金の受給資格者がいない場合に支給される保険給付で、労働者の死亡当時の身分関係で判断します。
労災保険は労働者を守るための社会保険制度です。労災保険の理解を深めることで、制度を最大限に利用し、労働者にとって有利な活用ができます。
いざというときに行動できるよう、こういう社会保険制度があるということを覚えておくと安心ですよね。
(内容に関しては総務調べのため、実際申請を行う際は労基署等にきちんと確認を取りながら行うことをおすすめします。)
(出典)
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